内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 車は宇月の街をゆっくり抜けて、国道へ入ってゆく。
 祐奈は黙って、流れる景色を見つめていた。
 大和を連れて大雅に会いに行くようになって、祐奈は母に大和の父親についての話をした。
 さすがに隠しておくわけにもいかないからだ。
 さらにいうと、誰も恨まないと言った彼女がそのことについてどう思うのか知りたいような気もしていた。
 母は、大和を身籠った祐奈が東京から宇月に戻った際、根掘り葉掘り事情を聞こうとはせずに、温かく迎えてくれた。大和と祐奈を支えてくれた。
 だが二年の時を経て明かされた事実には、さすがに驚いたようで、しばらく言葉を失っていた。そして複雑な、なにか言いたげな目で祐奈を見つめていた。
 なぜ祐奈が大雅と一緒にならずに宇月へ帰ってきてたのか、そのわけについて思いを巡らせているようだった。
 けれどやはりなにか言うことはなく、毎週こうやって見送ってくれる。
 誰かを許すということ、すべてに優しくあるということは、強さとイコールだと祐奈は思う。
 自分はいつもそんな母に見守られてきた。
 でもこれからは自分もそうでなくてはならない、そうありたいと、祐奈は思う。
 もう自分も、大和の母親なのだから。
 なによりも、大和のために。

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