内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 少し申し訳なさそうなその大雅の確認に、祐奈は黙り込んでしまう。
 三人で会うこの部屋は昼間しか使わないけれど、念のため宿泊で取ってあるとは聞いていた。
『泊まってくれてもいいんだぞ』
 そう言われたことも何度かある。
 けれど今まで祐奈がそうしなかったのは、第一に大和の気持ちを考えてのことだった。たとえ実の父親だしても、まだ慣れないうちからずっと一緒にいさせるのは無理がある。
 でも今の大和の反応を見るかぎり、もう泊まっても問題ないということだろう。
「どうしても帰らないといけないわけじゃないけど……」
 ためらいながら祐奈は言う。
 祐奈だって、本音を言えばまだ彼と一緒にいたい。
「でも……」
「でも?」
 大雅が期待のこもった目で祐奈の言葉を待っている。
 祐奈は小さくため息をついて、現実的な問題を口にした。
「でも泊まる準備をなにもしてきていないのよ」
「……と、いうことは、準備ができればいいんだな!?」
 完全なる拒否というわけではない祐奈の言葉に、大雅が弾むような声で確認する。
 祐奈は少し驚いて反射的に頷いた。
「え? ……まぁ、それはそうだけど」
「そんなの全部買ってやるよ! 決まりだな」
 腕の中の大和を嬉しそうに、高く上げて大雅が勝手に結論を出す。
 そして大和に話しかけた。
「やったな、大和。今日はずっと一緒にいられるぞ! いっぱい遊んでやるからな!」
「た、大雅! 大雅ってば! そういうわけにいかないよ。泊まるための準備ってオムツだけじゃないのよ。すっごくたくさんいるんだから」
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