内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 祐奈と大雅が会うために使っているホテルは天沢グループでは珍しく、都市型のホテルである。大型ショッピングモールや映画館、コンサートホールがある三年前にオープンしたばかりのこの地域の新しいランドマークの中にあって、全ての施設へ遊歩道で行けるようになっている。
 いつもホテルに直行直帰の祐奈はこのショッピングモールへ来るのははじめてだった。
「思ったより混んでたな」
 そう言って大雅は、ショッピングモールの三階から一階のメインストリートを見下ろした。
 モールは吹き抜けになっていて祐奈たちがいる三階のテラスからモールの全容が見渡せる。
 大雅の傍にはたくさんの荷物を乗せたカート、それを見て祐奈はため息をついた。
「こんなに買って……」
 もちろん大和が一晩泊まるのに必要なものはたくさんある。でも本当に必要かどうか迷うようなものもあるわけで……。それなのに考えている祐奈の隣で、大雅はぽいぽいとすべてカゴに入れていったのだ。
『迷うなら買っておけばいいだろ』
 などと言って。
 そしてカゴに入れたら最後、棚に戻すことは絶対にさせてくれなかった。
 そうこうしている間にカートはいっぱいになってしまったのだ。
 そのカートに座って、大和は大雅に買ってもらった車のおもちゃを持ってご機嫌である。
「どっちにしろ、使うものなら無駄にはならないじゃないか」
 こともなげに大雅は言う。
「や、大和の物はともかく、私の物はいらなかったのに」
 祐奈は頬を膨らませた。
 大和分の買い物が終わると、大雅は今度はレディースファッションフロアに移動した。そして祐奈にたくさんの服を試着させた。
 そして祐奈が言われるままにあれこれ試着しているうちに、全部買ってしまったのである。
「あんないい服、私普段は着られないのに。どうせ大和に汚されるんだから」
 大和と違って祐奈は大人なのだから、天沢ホテルの充実したアメニティを考えると、たかだか一泊するのに必要なものはそう多くない。本当に必要なのは下着ぐらいだった。
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