内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 すべての買い物を終えてホテルの部屋へ戻る道すがら、通りかかったジュエリーショップのショーケースに飾られた、あるネックレスが祐奈の目に留まった。
 祐奈は吸い寄せられるようにショーケースに歩み寄る。
 ガーネットのネックレスだった。
 縦に三つ連なった赤い石。一番下は大きくて二番目は少しだけ小さくて、そしてその上に小さな石がちょこんと乗っている。
 細長い赤い三角形のデザインは、祐奈にある特別なものを連想させる。
 この赤い色、これはまるで……。
「東京タワーの赤だ」
 不意に囁かれた言葉に、ハッとして振り返ると先を行っていたはずの大雅だった。
 祐奈はその優しい眼差しをジッと見つめる。
 東京タワーの赤。
 でもこの色は、ふたりにとっては少し意味合いが違っている。
 普段の日の東京タワーは、朱色に近い赤い色。
 でも時々、特別にライトアップされて別の色に染まる夜がある。
 あの夜の東京タワーは、このガーネットのように深い赤一色だった。
 あの夜。
 あの夜、ふたりは……。
「気に入った?」
 尋ねられて、祐奈は慌てて首を振る。
「ううん、ちょっと綺麗だなって思っただけ。……行こう」
 そしてまた歩き出す。
 あの夜の出来事を、大雅も覚えていてくれた。
 熱いもので胸の中がいっぱいになった。

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