【完】片手間にキスをしないで
< 夏杏耶 side >
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19/26,+,1/26,7/26,5/26
(音を司るものに問え)
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な……なんだこれぇ……。
コンクリート調のキャンパス内。周りが学祭を嗜んでいる中、夏杏耶はとある暗号を前に、顔を青くさせた。
「どう?解けた?」
「ちょっと……ちょっと待って」
「早くしないと、ずっとつながったままだよ~」
暗号の書かれた用紙を覗き込む鮎世は、ジャラッ、と繋がれた手錠を煽るように見せつける。
うっ……そもそも、なんで私がこんなことに……。
喧騒に紛れて奈央クンとまた2人きりになる作戦は、もう続行できそうにない。
夏杏耶は事の発端を思い返しながら、唇を噛みしめた。
───数分前。
『なんかさ……手錠で繋がれてる2人組、やけに多くない?』
イケメン彼氏と合流を済ませたあと、美々は目を光らせて。
『ああ。文芸サークルの出し物だよきっと』
と答えた美々彼は、柔い笑顔を携えた。