【完】片手間にキスをしないで
海理と名乗った彼は写真で見るよりも好青年で、華があって。
大学のデザイン科に在籍していると聞いた時は、妙に納得してしまった。さすが、面食いの美々。
『何それっ、面白そう』
『一緒に行ってみる? よかったら皆さんも』
はしゃぐ美々を横に、年上らしい包容力で微笑む海理。
その笑みを見上げていた時は(奈央クンと手錠で繋がれるなんて……!)と、諸々目論んでいたっけ───
『……なんで』
『ククッ、顔面蒼白……夏杏耶ちゃん、俺のことホント嫌いだよね』
別に嫌いじゃないけどさぁ……。
<ふたりの絆はいかに?! 暗号を解いて、手錠を解除せよ!>
と掲げられた文芸サークルブースの中、夏杏耶は思い切り肩を落とした。
グッチョッパ(美々の提案)で決めたペアの相手が言わずもがな、奈央ではなかったからだ。
『よりにもよって鮎世とって……』
『はーい。では手錠つけますねぇ。頑張って〝鍵〟見つけてきてください♪』
ガチャンッ。