【完】片手間にキスをしないで
……だって。鮎世はきっと、馬鹿じゃない。
「上目遣い。可愛いな」
「ねぇ、お願い。唐揚げご馳走するから」
「さすが奈央の彼女。スルースキルが恐ろしいよ」
プククッ、と肩を揺らす鮎世に、夏杏耶は首を捻る。
「ふぅ……分かった。仕方ないから、唐揚げ一個で手を打とう」
「ほんと?」
「とりあえず、一問目はね」
「~~っ!! やった……!ありがとう!」
表情を変えて足早に進む夏杏耶に、鮎世は複雑な表情で口を覆う。
「そんなに喜ぶほど、俺と繋がれてるのイヤ?」
「えっ、あ……う、そういう訳じゃないけど……」
「けど?」
「鮎世も……早く解いて、奈央クンのところに行きたいでしょ」
そして彼は、大きな目をさらに大きく見開いた。
同じ執着と依存と、対象への愛情───
友愛と恋愛とじゃ、種類は違うかもしれないけれど、鮎世の気持ちは手に取るように分かるんだ。