【完】片手間にキスをしないで



「変だと思わないの?」

「え……何が?」


パチパチッ、と唐揚げの揚がる音を前に首を傾げる。


見上げると、鮎世は暗号の紙をひょいっと取り上げながら、珍しくか細い声で紡いだ。


「奈央への思い……っていうか。友だちにしては重すぎるし」


自覚はあるんだ……それも、私と一緒。


夏杏耶は唐揚げを受け取りながら、不覚にも笑みを零した。


「ふふっ、重たくなっちゃうよね……分かるなぁ。奈央クンに対してだと、どうしてだろうね───」


言いながら見上げると、彼は再び目を丸くして。今度はフードの中で頬を染めた。


「鮎世?」

「ん? いや……うーん……あれ?」


……おかしいな。いや、おかしくない?夏杏耶ちゃんも一応女の子だし───


ブツブツと続けながら、鮎世は紐を引っ張ってフードを窄める。おかげで、嫌に目立つアイドルフェイスは一瞬で隠れた。

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