【完】片手間にキスをしないで
……遅いのは、俺の方だった。
「大好き、奈央クン」
どちらからともなく目を閉じる。
奈央は残り僅かの理性を使い切り、触れるだけのキスに留めた序盤。
「……あんま、好き好き言うなよ。薄れる」
「えっ……ごめ、んッ……」
2回目以降は、想定通り歯止めなど効かなくて。伊達眼鏡など、なんの障害にもならなかった。
「ん、ふっ……」
「声、あんま出すなよ」
睡魔と本能の狭間で朦朧とする意識。背徳感も相まって、加速したのだろうか。
彼女の腰を支えながら、奈央は自分でも驚くほどにキスを求めた。自分を「好きだ」と刻むその唇に、幾度も重ねた。
「ぅ……ん」
「声……出てる」
「だ、って……」
隙間を縫って呼吸をする仕草がかわいくて、止まらなくなる。彼女の応答が曖昧になるまで、甘い雨を降らせ続けた。
───そして、夜明け。
「……」
雑魚寝の形で眠る彼女の頬に、触れるだけのキスを捧げた。