【完】片手間にキスをしないで


「それにしても、奈央はなんでモテるかねー。我が息子ながら謎が深い」

「はは……これ以上モテちゃったら、私も困ります。でも……もう少し、話せたらよかった」

「……うん?」

「奈央クンのどこが好きなの、って……お互い違う生き方をしてたら……同じ学校に通う同級生だったら、一緒に分かりあえることも沢山あったのかもしれない」


同じ人を同じ気持ちで好きになるって、凄いことだと思うから───


目を細めながら頷いてくれるその表情に、夏杏耶はそう紡いだ。自分でも驚くほど、穏やかな気持ちだった。


「そうね。……ちょっと、いやかなり屈折はしてるけど」

「うん……確かに」

「……でもいつか、きっと伝えてあげて」


微笑みながら言う絆奈の言葉に、大きく頷く。そして、ようやく動き出した布団の中身を覗き込む。


「おはよう、奈央クン」

「おはよ、奈央」

「……おはよ」


起き上がったその大きな図体に、2人顔を合わせて笑いあった。

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