【完】片手間にキスをしないで
妬み嫉みは顕著に牙を剥きだした。同時にフードで視界を塞ぎ始めたことも、よく覚えている。
意味がないと分かってはいても、つけあがると感じていても、覆うだけで心が落ち着いた。
ただ、自分の内側の声がより明瞭になったのも事実。次第に疑念や恨みは募っていき、あるとき不意に爆発した。
『キャーッ……?!』
きっかけはなんだったか。……自分が〝塩〟を被っていた事くらいしか、覚えていない。
廊下に投げ出したクラスメートの男子が、気づけば項垂れていて。その姿を前にして、けっこう笑った。さすがに女の子たちも引いていた。
『つーか俺たちは悪くないよな……あいつに手出してねぇし』
『そこは、まぁ……別にいじめとかじゃないしな』
『とりあえず、先生呼ぶ?どうする?』
いや───俺よりも、投げ出された男子の仲間たちに対する軽蔑の方が強かったかもしれない。