【完】片手間にキスをしないで
◇
「ヒミツのひとつやふたつあるでしょ~、あの朴念仁にも」
「……ニンジン?」
「朴念仁。意味は自分でググってね」
2年1組、朝礼前の十数分。
新学期早々、窓際後列ポジションを獲得した夏杏耶は、ネイルを施しながら放つ木原 美々を前に俯いた。
「やっぱり、探るのって良くないかなぁ……」
小柄で童顔な見た目とは裏腹、恋愛経験の豊富な美々には、こうしてときどき彼の相談をしていたりする。
ただ、オシャレも勉強も恋愛も人一倍真っすぐな彼女は、
「あー。それはうざいかも」
と、紡ぐ言葉もかなり直球。
なので、周りの女子から敬遠されることもあったみたいだけど、何かと疎い自分にとっては、この物言いが心地良かったりする。
夏杏耶は綺麗に整えられた彼女のハーフツインを見据え、「うーん」と唸った。
「知りたいって思うのは、欲張りかな……」
「別に欲張りじゃないよ。普通だけどさ。カーヤちゃんには荷が重いっていうか」