【完】片手間にキスをしないで
そして、続く美々の言葉に首を捻る。荷が重い……とは?
「カーヤちゃんらしく行くなら、どストレートに訊く方法しかないだろうけど……冬原先輩がそれに応えるとは到底思えないし」
「私らしく行かないとしたら……?」
「それとなく探りをいれて、言いやすい雰囲気を作るとか。ストーキングしてみるとか」
「ストーキング……むずかしそう」
「前進しか目にないカーヤちゃんには無理だと思うのよ、友としては」
ふぅ、と彩を与えた爪に息を吹きかける美々。
1年ちょっとの付き合いとはいえ、彼女の言っていることは概ね的を得ていた。
しかも、自分のことだけでなく、直接的な関わりのない彼の性質までずばり……。
「てゆーか改めて……健気だよねぇ、ほんと。カーヤちゃん」
「それは俺も思うわ」
ようやくネイルから視線を移し、こちらを捉える美々。と、もうひとつ。
上から馴染んだ声が降る。
見上げると、部活のバッグを引っ提げた静が右隣に立っていた。