【完】片手間にキスをしないで

そして、続く美々の言葉に首を(ひね)る。荷が重い……とは?


「カーヤちゃんらしく行くなら、どストレートに訊く方法しかないだろうけど……冬原先輩がそれに応えるとは到底思えないし」

「私らしく行かないとしたら……?」

「それとなく探りをいれて、言いやすい雰囲気を作るとか。ストーキングしてみるとか」

「ストーキング……むずかしそう」

「前進しか目にないカーヤちゃんには無理だと思うのよ、友としては」


ふぅ、と彩を与えた爪に息を吹きかける美々。


1年ちょっとの付き合いとはいえ、彼女の言っていることは概ね的を得ていた。


しかも、自分のことだけでなく、直接的な関わりのない彼の性質までずばり……。


「てゆーか改めて……健気だよねぇ、ほんと。カーヤちゃん」

「それは俺も思うわ」


ようやくネイルから視線を移し、こちらを捉える美々。と、もうひとつ。


上から馴染んだ声が降る。


見上げると、部活のバッグを引っ提げた静が右隣に立っていた。

< 43 / 330 >

この作品をシェア

pagetop