【完】片手間にキスをしないで
───でも、どうして『お前ら』?
私と奈央クンを差して言ったのかな……懲らしめた記憶は全くないけれど。
「……おい」
「うぅん……なおくん……」
「おい。起きろ」
「うへ……でもつぎは、わたしが、」
「……夏杏耶。腕」
チュンチュン。
ぼやっ、と明らめた視界とは別に、ベランダからの知らせが新生活の朝を覚えさせる。
そうそう……それと、目の前にある人肌……って。
「○※△×……?!」
「おせぇわ」
はぁ、と呆れ顔が至近距離で息を吐く。同時に夏杏耶は声にならない声を発し、硬直した。
奈央クンの言い付けを守り、昨日はちゃんと寝室で……彼はリビングに敷いた布団で寝ていたはずなのに……。
「な、なんで奈央クン……私のベッドに?!」
「は?アホか。どう見ても逆だろ」
「え……」
「お前が入ってきたんだよ。夜中」