冷酷無慈悲な騎士団長様は、純粋でとびきり甘い転生者!?
「いえ、かのようなことは決してありません」
「では、これが政略結婚と分かっていますよね。貴方が皇族と婚約することが、どれだけ貴族や国民を安心させることかも」
さっき暗殺しようとした私が言う台詞じゃないけれど、彼の冷酷さが無くなった今、私は政略結婚の務めを果たしつつ、夫婦として彼を愛すために歩みよめる。
「駄目です!」
「駄目?」
「いや、ですが、冷酷騎士団長ルートは、逃げ出そうとする貴方の足の健を切り監禁愛玩ルートか、初夜に殺されるバッドエンドしかなくて」
うーん。彼が何を言っているのか一ミリも理解できないけど、彼の悲痛な表情を見ると、胸が痛む。
「でも貴方はそんな残酷なことをしないんですよね」
「私はもちろん。アストリア様には指一本触れません」
「いえ。触れて下さい。ちゃんと夫としてのお役目を果たして下さい」
私が、冷酷無慈悲な騎士団長を、ベッドに投げ入れた瞬間、タイミング悪くリンスロット卿が、剣を抜きながら、ドアを蹴り破った。
こうして、私と騎士団長の甘くて甘くない新婚生活が幕を開けたのだった。