冷酷無慈悲な騎士団長様は、純粋でとびきり甘い転生者!?

 は?
 終わった。

 毒も効かず、大きな尻だったダズが、床から顔を上げて呻いている。
 もう一度、扇子で頭を狙うか、けれど扉際まで逃げていたので、再び扇で殴るのは間に合わないかも知れない。
 頭を抑えていた彼は、指の隙間から私を見る。
 血走った目を見て、私の最期を確認した。
 この平和な国に、戦争が起きてしまうのか。

「主従純愛ルートになってしまう」

 ん。
 んん?

「幼馴染みのリントロット卿は、第一王子の娘と婚約中。それでも幼い頃から惹かれ合っていた二人は、騎士団長を暗殺後、第二王子の協力の下、隣国へ愛の逃避行、主従純愛ルートに」

 めっちゃ早口で喋ってる。
 この人、誰?
 それぐらいめっちゃ軽快に喋ってる。
 普段は地面に沈むんじゃないかってぐらい重々しい低い声なのに。

「あの、毒が効いて頭がおかしくなったのかしら?」
 それなら好都合なのに。
「いえ。皇女さま。大変失礼致しました」
 頭から血を流しながら、ダズはその場で傅き恭しく言う。
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