冷酷無慈悲な騎士団長様は、純粋でとびきり甘い転生者!?

「貴方のおかげで、私は前世の記憶を持つ人格を表に出すことができました。これで、貴方の未来を救えます」

 は?
 固まっている私に、今まで見たことがないほど柔らかい表情で微笑み、そして拝んだ。
 ……拝んだ?


「貴方は前世、自分の押しが演じていたアストリア姫を好いていました。原作は勿論、コミカライズ、派生小説、ゲームも全て脳の皺に印刷するぐらい記憶に刻んでおりました。けれど、こちらの世界で折角の騎士団長に転生できても、意思が自分ではなく騎士団長のままで、貴方が私の脳髄めがけて攻撃してくだされなかったら、今頃」

「待ちなさい。情報が多すぎるわ。知らない言葉の羅列は止めなさい。私を誰だと思っているの」

 私を拝みながら甘く微笑む騎士団長に、内心ときめきながらも、まだ距離を取る。リンスロットは何をしてるの。どうせ婚約者とイチャイチャしてるんだろうけど、こんな時ぐらい私を心配してほしいものだ。
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