身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
身ごもりましたが結婚できません
「このスーツにはこれが合いますね」
翌朝、凛音は寝室に通じるウォークインクローゼットで着替える柊吾に、紺地に黄色の細いストライプのネクタイを手渡した。
昨年、社長賞受賞のお祝いにと凛音が用意したもので、柊吾が着ているグレーのスーツにぴったりだ。
「今日はゆっくりしてろよ」
柊吾は慣れた手つきでネクタイを結びながら、強い口調で凛音に言い聞かせる。
「何度も言わなくてもわかってます。柊吾さんはお仕事頑張ってくださいね」
凛音は今朝から同じ言葉を繰り返す柊吾に呆れた。
柊吾の過保護ぶりは昨日から継続中だ。
「私なら心配しなくても大丈夫です。なんなら仕事にも出られるくらい元気ですから」
軽くそう言って小さくガッツポーズを作る凛音に、柊吾は厳しい目を向けた。
「なに言ってるんだ。会社でまた体調を崩したらどうするんだよ。俺はしばらくいないし他の男に抱かれて医務室なんて……考えただけでイライラする」
いきなり語気を荒げ眉を寄せる柊吾に、凛音はため息を吐く。