身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
「そんなに気を張らなくても大丈夫。……でも、その気持ちはよくわかるわ。私、シングルで出産したから、気負いすぎてたのよね」

「え、シングル……? でも」

瑞生は以前、苑花の夫は大企業の次期社長だと言っていた。

それに二階のリビングにも娘とともに親子三人で写っている写真が何枚も飾られていた。

「あ、そうなの。今は娘の父親と結婚したからシングルではないの。でも、事情があって妊娠したことを彼には伝えないまま出産したのよ。……あ、帰ってきた」

そのときシャワーの音に重なって店のドアが開く音が聞こえ、続いて「ママただいまー」という女の子の声が続いた。

「ごめんなさいね。娘が帰ってきて……え、あら、思ったよりも早く着いて……」

苑花は続けざまに戸惑った声をあげたが、しばらくして「お帰りなさい。冷蔵庫にシュークリームがあるから手を洗ってから食べてね」となにもなかったかのように声をかけている。

顔に置かれたタオルのせいで見えないが、苑花は娘とやりとりをしているようだ。

ふと凛音はお腹に手を置き、お腹の子は女の子かなと想像する。






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