身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
同時に、自分は苑花のように子どもから幸せそうな声で「ママ」と呼んでもらえるだろうかと不安になった。

「あの……不安はありませんでしたか? ひとりで子どもを産んで、その後もひとりで育てるって大変ですよね」

どんな事情があったにせよ、シングルでの出産を決意するまでには悩みも多かったはずだ。

凛音自身もこのままだと苑花と同じ立場での出産となる。

産むと決めているが、不安がないわけではない。

それどころか不安ばかりが日ごとに増して、本当に子どもを育てられるのか自信もない。

今はつわりがつらくてそれどころではないが、体調が落ち着けば悩む時間が増えるはずだ。

「もちろん不安だったわよ。眠れなくなるほど悩んだし」

そのときシャワーの音が止まり、温かなタオルで包まれる。

「でもね、兄だけでなく家族が全力でサポートしてくれたから、ありがたかった。この店も父親が全面的に費用を負担してくれたからオープンできたようなものだし。シングルなんて軽々しく口にできないくらい恵まれてたわ。今は夫が側にいてくれるからさらに心強いし」

苑花の満ち足りた声に、凛音は小さくうなずいた。




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