身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
愛でられる籠の鳥
「せっかくだから苑花さんにカットをお願いするつもりだったんですけど」
「近いうちに連れて行くから安心しろ。結婚式の凛音のヘアメイクを苑花さんに頼んでるからその打ち合わせだ」
「結婚式……誰の結婚式ですか?」
凛音は運転席の柊吾に慌てて問いかけた。
「誰のって、俺と凛音の結婚式に決まってるだろ。え、したくないのか?」
前方をまっすぐ見ながら、柊吾は笑いをかみ殺し声で答える。
凛音の答えなど聞かなくてもわかっているのだろう、満ち足りた笑みを浮かべて運転を続けている。
「……したいです」
柊吾の笑顔に弱い凛音は、思わず見とれて乱れた鼓動をごまかすように助手席に勢いよく体を預けた。
「俺も凛音と結婚したい。苑花さんには無理を言ってスケジュールを空けてもらったんだ。彼女はウェディング雑誌に紹介されるほど人気なんだよ。だから髪を切るなら結婚式の後にしろよ。あと三ヶ月のことだから我慢できるだろ」
「三ヶ月? え、私なにも聞いてませんけど」
再び凛音は身を起こし、戸惑いの声を柊吾にぶつけた。