身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
そう思い凛音はなにも言わずにいるのだが、瑞生からその話題が出ないところを見ると、柊吾も凛音との関係を黙っているようだ。

自分は柊吾の恋人ではなく姉の身代わりだ。

だから柊吾がふたりの関係を秘密にするのは当然なのだ。 

凛音はその事実にチクリと胸を痛めた。

凛音は表情を整えて、手にしていたタブレットに視線を落とした。

「社長にかなりの数の取材申し込みがきているのですが――」
 
秘書としての口調を意識し、凛音は瑞生に向き直る。

柊吾との関係について考え始めると落ち込むばかり。

仕事に集中している方が気楽だ。

「取材か。プレミアムネクストがまた賞を獲ったからだろう? これで七冠。ここまで世の中に受け入れられるとは思わなかったな」
 
瑞生は座り心地のよさそうな椅子の背に体を預け、満足気な表情を浮かべる。
 
発売以来、あらゆる記録を次々と塗り替えているビール『プレミアムネクスト』が七つ目の権威ある賞を受賞し、業界誌をはじめ瑞生の見た目の良さゆえに女性向けの雑誌からも取材申し込みが相次いでいる。



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