身ごもりましたが、結婚できません~御曹司との甘すぎる懐妊事情~
いつもお互いの反応を徐々に引き出し窺い合いながら愛を交わすのに、今の柊吾はあまりにも性急で強引だ。

「どうか……したんですか?」
 
凛音は下腹部に広がる刺激に耐えながら柊吾に問いかけた。

すると柊吾は凛音の顎をすくい上げ視線を合わせた。

「俺が……俺がなんであれ、凛音は俺と一緒にいるんだ。勝手に俺から離れるな。今まで勝手に自分の家に戻ることなんてなかっただろ。そんなことをしても俺に連れ戻されるだけで時間の無駄だ」

「勝手にって……」
 
そのことならちゃんとメッセージを送ったはずだ。

たしかにこれまで自分の気持ちひとつで突然自宅に戻ったことはなかったが、柊吾にあらかじめ確認するべきだったのだろうか。

そう考えるもどこかすっきりしない。

やはりなにかあったのだろうかと気になるが、柊吾からの刺激が続いていてはまともに考えられない。

すると柊吾は凛音の体を乱暴に引き離し、強い視線を向けた。

「こんなときでも考えごとか? そんな余裕なんか捨ててしまえ」
 
吐き捨てるような言葉。

そして怒りにも似た重い感情を宿した黒い瞳。

そんな柊吾を見るのは初めてだ。



< 67 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop