百怪談
私の足をつかんでいるのは小さな赤ちゃんでした。



そしてその赤ちゃんは血にまみれ、何かを訴えるように私の足に絡みついてくるのです。



私は怖くなって、その赤ちゃんを振り払おうとしましたが、赤ちゃんの力が強すぎて、とても振り払うことができなかったのです。



『おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ』



再びキッチンの中で、赤ちゃんの泣き声が響き渡りました。



私はパニックになって、泣きながら夫に助けを求めていました。



お願い、放して。



どうして私にしがみつくの?



あなたは私に何をしたいの?



恐怖に怯える私の胸に様々な思いが込み上げてきました。



そして私が怯えながら床に倒れ込んだとき、キッチンの明かりが急にパッとつきました。



私がそのことに驚き、泣きながら顔を上げると、そこには夫の武司が立っていたのです。
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