百怪談
夫は取り乱している私を心配そうに見ていました。



私は明るくなったキッチンで、怯えながら振り返ると、さっきまで私の足にしがみついていたはずの赤ちゃんはいなくなっていたのです。



私は荒い息を吐き、恐怖に包まれながら、さっきまで私の足にしがみついていた赤ちゃんのことを考えていました。



あの赤ちゃんはいったい誰だったのか?



そのとき、記憶の中で薄れかけていた中絶した赤ちゃんを私は思い出していたのです。
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