百怪談
ピアノの音色は本当に悲しげでした。



そして、その悲しげなメロディは演奏者の気持ちを現しているようにも思えました。



私は音楽室の前に立ち、そっと音楽室のドアを開けました。



そして、中の様子を伺い、音楽室に入っていきましたが、ピアノの演奏者の顔はまだ見えません。



私は三年生だったこともあり、暗い音楽室でピアノを弾いている不審者を確認しようと、音楽室の明かりをパッとつけました。



暗かった音楽室は明るくなり、私はしてやったりとばかりにピアノの方に目を向けました。



ピアノの演奏は中断され、ピアノの前にはセーラー服を着た女子生徒の姿が見えます。



私はそこにいる誰かに話しかけました。



「あなた、誰なの？」



私のその問いかけに言葉は返ってきませんでした。



そして、あるべき返事の代わりに悲しげなピアノの音色が、また音楽室に流れ出したのです。
< 18 / 72 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop