百怪談
継母はよくお酒を飲む人でした。



そしてお酒を飲むと私たちのことはそっちのけで、父と二人で話し込みます。



そんな遠い存在の彼女を見ていると、死んだ母のことを思い出して、泣きそうになってしまいます。



もしもお母さんが生きていたら……。



もしも……。

もしも……。

もしも……。



まだ空想の中で生きているお母さんが私の本当のお母さんで、お父さんとだけ楽しそうに話している継母は、仕方なく私たちの世話をしてくれている人なのです。



そして継母が酔っ払いながらお父さんに、「私も本当の子供が欲しい」と言ったのを私は偶然聞いてしまったのです。



その日から私と裕也はこの家にはいらない厄介者なのだと心の中で思うようになりました。



継母と私たちは血が繋がっていない他人で、私たちの本当のお母さんは、いつでも私たちの味方をしてくれたあのお母さんしかいないんだって。
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