百怪談
私はそう言った裕也の泣きそうな顔を見つめながら、裕也にこう答えました。



「きっとお母さんに会えると思うよ。

お母さんはいつでも私たちのことを思っていてくれるはずだから」



私は自分が言ったその言葉に感情を揺さぶられて、お母さんのことを思い出して泣いていました。



私たちには居場所がない。



私はお母さんのところに早く行きたいって……。



「ねぇ、裕也。次にこの踏切が下りたなら、私たち線路に向かって歩いていこう。

そしたらきっと私たちは、天国にいるお母さんに会えると思うんだ」



裕也は私のその言葉に小さくうなずき、私たちの運命を決める計画はすぐに実行されることになったのです。



そして五分後、甲高い警報の音とともに踏切がゆっくりと落ちていきました。



それを見つめていた私たちは、その踏切が発する魔力に引き寄せられるように線路へと歩き出したのです。



この踏切を越えたなら、きっとお母さんに会えると信じて。
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