百怪談
私と裕也は迷いなく、二人で横並びになりながら線路へと歩きました。



そして私たちが覚悟を決めて踏切のすぐそばまで来たときです。



今まで無風だったこの辺りに、急に強い風が吹いたのです。



その風はまるで私たちの行く手を阻んでいるようでした。



そして私たちの体はその強い風のためにゆっくりと後ろに押し戻されたのです。



そんな強風の中で私が砂煙の舞う線路に目を向けたとき、線路の向こう側で死んだはずの母が、悲しそうに私たちを見ていたのでした。



私はあのときの母の悲しげな顔を今でも鮮明に覚えています。



母は私たちに「こっちに来るな」と、言葉には出さなくとも強く訴えかけていたのです。
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