崩れ行くパラレルワールド
ざっと数えて遭難10日目。
そろそろお腹が空いてきた。
あと、喉も乾いた。
遭難してから雨は1度降ったものの、ただの通り雨だったため、2日ほどの飲み水の確保しか出来なかった。
ただ、こんな状況で1つだけ、良いことがあった。
それは、小屋を見つけたことだ。
寝床がある。
綺麗な井戸がある。
武器もある。
もう、大丈夫だ。
助けを待つ必要は無い。
2、3日はここで休もう。
なんならここを生活の拠点にするのも良い。
でもひとつだけ、不満がある。
小屋の裏にある祠から、ただならぬ視線を感じる。
白状する、ただただ怖い。
今すぐに無くして欲しい。
だからといって、自分で壊して祟られるのは嫌だ。
チラリと横目で祠を見る。
何もいない。
いや、いた方が怖いけどね。
心の中で毒付いたその時だった。
祠の後ろで何かが動いた…様に見えた。
怖いもの見たさから来る好奇心に誘われるがまま、祠に近づき、後ろを覗く。
そこには…指輪があった。
「…指輪?」
なんの変哲もない指輪だ。
小さな宝石が付いているのを見ると、婚約指輪の様だ。
この宝石は確か…ダトーライトだったかな。
そんな指輪が、祠を後ろから支える様に伸びている木の枝に、嵌められたように存在している。
それにしても、この宝石綺麗だな。
雪の様に真っ白で、記憶するかの様に周りの景色を映し出している。
さっき動いた様に見えたのは、この石に反射した光が、木の幹にでもぶつかったからだろう。
しかしだ。
この指輪、どうすれば良いのだろう。
このまま放置して、雨にさらされて、朽ちさせるのは少し勿体ない様な気がする。
ただ、相当しっかりと枝に嵌ってしまっているので、枝を折るとか、切るとかしないと取れないだろう。
とりあえず引っ張ろうと思い、宝石に触れた瞬間……
「…はぁ、はぁなんだ今の?」
ビルは崩れ落ち、塀は落書きで埋め尽くされている、荒れ果てた街。
響き渡る、聞くに耐えない罵詈雑言の数々。
憎み合い、傷付け合い、殺し合う人々。
思い出すだけで涙が溢れ出てしまう程の絶望感。
何故か感じだ懐かしさ。
そんな光景が頭の中に直接流れ込んできた。
しばらくの間、何も考えることも出来ず、動くことも出来ず、ただ茫然と立ち尽くしていた。
だから、背後から忍び寄る影に気付けるはずもなかった。
「…おーい、あれ、気付いてない?ちょっとー、ねぇってばー、大丈夫?」
「うぅん、大丈夫…多分」
僕は振り返らずに、朦朧としたままの頭で返事をした。
そして気づいた。
「待って、誰?」
そこでようやく振り返った。
そこには態とらしく顔を顰めた女性がいた。
「それはこっちのセリフだよー。君は誰だい?どこから来たの?何しに来たの?」
遭難10日目にして、住処と話し相手を見つけたのだった。
そろそろお腹が空いてきた。
あと、喉も乾いた。
遭難してから雨は1度降ったものの、ただの通り雨だったため、2日ほどの飲み水の確保しか出来なかった。
ただ、こんな状況で1つだけ、良いことがあった。
それは、小屋を見つけたことだ。
寝床がある。
綺麗な井戸がある。
武器もある。
もう、大丈夫だ。
助けを待つ必要は無い。
2、3日はここで休もう。
なんならここを生活の拠点にするのも良い。
でもひとつだけ、不満がある。
小屋の裏にある祠から、ただならぬ視線を感じる。
白状する、ただただ怖い。
今すぐに無くして欲しい。
だからといって、自分で壊して祟られるのは嫌だ。
チラリと横目で祠を見る。
何もいない。
いや、いた方が怖いけどね。
心の中で毒付いたその時だった。
祠の後ろで何かが動いた…様に見えた。
怖いもの見たさから来る好奇心に誘われるがまま、祠に近づき、後ろを覗く。
そこには…指輪があった。
「…指輪?」
なんの変哲もない指輪だ。
小さな宝石が付いているのを見ると、婚約指輪の様だ。
この宝石は確か…ダトーライトだったかな。
そんな指輪が、祠を後ろから支える様に伸びている木の枝に、嵌められたように存在している。
それにしても、この宝石綺麗だな。
雪の様に真っ白で、記憶するかの様に周りの景色を映し出している。
さっき動いた様に見えたのは、この石に反射した光が、木の幹にでもぶつかったからだろう。
しかしだ。
この指輪、どうすれば良いのだろう。
このまま放置して、雨にさらされて、朽ちさせるのは少し勿体ない様な気がする。
ただ、相当しっかりと枝に嵌ってしまっているので、枝を折るとか、切るとかしないと取れないだろう。
とりあえず引っ張ろうと思い、宝石に触れた瞬間……
「…はぁ、はぁなんだ今の?」
ビルは崩れ落ち、塀は落書きで埋め尽くされている、荒れ果てた街。
響き渡る、聞くに耐えない罵詈雑言の数々。
憎み合い、傷付け合い、殺し合う人々。
思い出すだけで涙が溢れ出てしまう程の絶望感。
何故か感じだ懐かしさ。
そんな光景が頭の中に直接流れ込んできた。
しばらくの間、何も考えることも出来ず、動くことも出来ず、ただ茫然と立ち尽くしていた。
だから、背後から忍び寄る影に気付けるはずもなかった。
「…おーい、あれ、気付いてない?ちょっとー、ねぇってばー、大丈夫?」
「うぅん、大丈夫…多分」
僕は振り返らずに、朦朧としたままの頭で返事をした。
そして気づいた。
「待って、誰?」
そこでようやく振り返った。
そこには態とらしく顔を顰めた女性がいた。
「それはこっちのセリフだよー。君は誰だい?どこから来たの?何しに来たの?」
遭難10日目にして、住処と話し相手を見つけたのだった。