崩れ行くパラレルワールド
さて、いよいよ小説っぽい展開がきたな。
どうやら目の前で喜怒哀楽を表現しながらマシンガンのように話し続けている女性は、谷原燈《たにはらあかり》という名前のようだ。
彼女はおよそ10分間ノンストップで話し続け、やっと落ち着いたようで、今度は僕が話すターンかと思ったのだが、興味を無くしたのかどうかは知らないが、小屋の中へ入って行ってしまった。
先程の長い話を要約すると、「久しぶりに人間と出会えて嬉しい」といったところだ。
有益さの欠片も存在していない。
まぁ、今後彼女から情報は聞き出すとして、話し相手が増えたのは素直に嬉しい。
そして恐らく、この小屋は彼女の別荘といったところだろう。
鍵の掛かった小屋の扉を開錠し、中に入って行ったのだから。
こんな森の中に別荘を作るのだから、人と距離をとりたかったのだろう。
彼女の過去に何があったのかは知らないが、とりあえず僕も小屋の中に入れてもらおう。
そう思い、小屋の扉に触れた瞬間…「ガチャリ」という無慈悲な音とともに内側から施錠されてしまった。
「…は?なんでだ」
意味がわからない。
何故僕を中に入れさせない?
来客だから部屋を片付けたいだけなのかもしれないが、一言断りを入れるのが筋じゃないのか?
まぁ良い。
どれだけ考えても人の心は読み取れない。
少し待っていよう。


「……遅い!」
思わず叫んでしまった。
待とうと思ってから既に2日が過ぎた。
小屋と言っても広さはある。
1日くらいは覚悟していたが、3日目に突入しても、何も言ってこない。
それどころか物音ひとつしない。
寝ているのかもしれないが、客人である僕を放って置いて眠るとは、頭おかしいのか?
それとも…と、悪い予感が胸を騒がす。
しかし、放ってはおけない。
何より夜は凍える様な寒さだ。
早く暖まりたい。
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