最低狩り
八蔔サイド
「うう……う」
苦しみの吐息と共に乗ってきた唸り声に目を向ける。
相変わらず顔は赤く、汗が止まらない男子生徒が真っ白なベッドに横たわっていた。
……たくよ、最近の子供は弱すぎんだよ。
そいつを睨みつけながら、毒を吐く。
ボールペンを指で弄りながら、苛つきを抑えた。
あーあ、こりゃまたお呼び出しだな。
今度こそやべぇかも。
「伊達先生、ちょっと」
案の定、保健室のドアの、わずかに開いた隙間から老けた声が覗いた。
保健室のドアを勢いよく開き、無言の圧を、光る頭に与える。
……あれ、何だっけ。
あれにめっちゃ似てんだ。
あの……ふら、ふらん……。
フランスパン、ザコエル?
……とにかく、あの、黒船の奴らの、有名な奴の頭と同じなんだよ。
黒船はあれか、ペルーか。
……ペルー?
もうええわ。
もともと、ボサボサと散乱している髪の毛を、更に乱す。
暗記はどうも苦手なんだ。
「話がある。冷泉くんが安定したら、校長室に来なさい」
俺が口を開こうとする前に、ドアの音でそれを遮られた。
チッ、と俺の舌打ちが保健室に響いた。
あと何回で俺の教師人生は終わりを迎えるのだろうか。
楽しみだぜ――。
自分でも意味の分からない気持ちと共に、右側の口角だけ上げることに成功した。