最低狩り
真奈サイド
花奈さんが隣で崩れ落ちる気配がした。
私も、もうすぐ倒れてもおかしくない程、膝が震えている。
荒い息も、震えを伴い、余計に不安を煽る。
「次に、松谷さん」
その名に、びくっ、と大きく体が反応した。
明にも、何かあるの……?
「松谷さんの喘息は、アレルギー性ではなく、運動誘発性でした。つまり、八蔔さんが体育倉庫を掃除させたせいではないということです」
「そんな……っ!」
喉の奥にツンとした刺激が走り、うっすらと涙が滲んだ。
「で、でも明は、明はっ!自分で言っていたんです、アレルギー性で、喘息の発作が起きるから、サッカーができなくなるって!!」
「それは、彼の母親がそう言ったんです。アレルギー性ならば、サッカーをしても問題無い。ですが、運動誘発性ならば別だ。きっと、彼を傷つけたくなかったのでしょう。彼の大好きなサッカーで、自分の体がバグを起こしてしまったことを言えば、傷つきます」
私も、膝から崩れ落ち、仰向けに倒れた。
粘つく涙を拭き取りもせず、思考を停止させた。
お母さん……。
明……。
私、何て意味の無いことをしたんだろう。
全部、分かっていれば、こんなことはしなかったのに。
どうして、隠してたのかな?
「最後に、八蔔さんについて」
「八蔔さんは、美奈さんが拉致されたこと、自殺したことに、すごく責任を感じていました。それも、ヤケ酒するほどに。あなたなら、知っていますよね、真奈さん」
問われてはっとする。
確かに、ある1地点から、急激に酒の量が増えた気がする。