シオン
「ん…」眠い目をこすり、欠伸をした後驚いた。「おはよ」といって微笑む楓が目の前にいた。
夢と現実が混ざってしまったらしい。どこからが夢で、どこからが現実なのか寝ぼけた頭ではわからない。

でも、楓の香りがする。どこか懐かしい、落ち着く楓の匂い。楓の匂いがするってことは夢じゃないな…と少しずつ頭が動いてきた。


とても長い夢を見ていたと思う。私が楓に話しかけた日。恋に落ちてしまったんだと自覚した日。それらはとても前のような、最近のような出来事。


「お前って本当本好きだよなぁ」楓が笑う。「もうみんな帰っちまったぜ、俺らも帰るぞ」と。


楓と私は今、友達だ。多分。
あの小説について話すようになってから、好きなアニメとか漫画とか、他にもいろいろ話す仲になった。


教室には楓と私だけ。

夕陽が差し込む教室に、2人きり。

もし。もし私が普通の女の子だったら。

そしたら、告白してたのかな。

だって今、この上なくロマンチックだよ。

こんな時に君のことを考えていられないなんて、隣にいるのに想っちゃ駄目なんて。

ずるい。ひどいよ、神様。

靴箱で外靴に履き替える。
楓がこっちに振り向く。目が合う。
「ん?」と楓。
「…んーん」と私は首を振る。

あーあ、駄目だなぁ。
私は君に恋をしてしまった。
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