カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
嫉妬
撮影した写真は翌日、プロの先輩カメラマン、雪乃さんに休憩の時に見せることにした。
「いい写真ね。それにレタッチがすごく上手。でもこれ、咲ちゃんが撮ったものじゃないよね?」
「どうしてわかるんですか?」
「構図もレタッチの感じも咲ちゃんのと全然違うもの」
たまに雪乃さんには撮影した写真を見て講評を頂いている。
だからこそ私のクセが分かるのだけど。
「そもそもこの表情は好きな人に向けたものでしょう?」
さすがだ。
というより私が気がついたのだ。
雪乃さんがわからないはずがない。
「やっぱりそうですよね」
私の勘違いではなかった。
「うん。でもこの写真がどうかしたの?」
「あ、えっと、そこに映っている方、知り合いなんですけど、今日の午後、七五三の撮影に来る子供のママなんです」
「へぇ」
雪乃さんは呟くと写真を見て言った。
「ねぇ、この写真を撮ったのは誰?この女性が七五三に来る子のママならご主人が撮ったの?」
月城さんの名前を出すべきか、答えに困っていると矢継ぎ早に雪乃さんは質問を投げかけてきた。
「咲ちゃんはさ、この写真を私に見せて本当はなにが言いたかったの?」
「えっと、それは」
動揺する私を雪乃さんはチラッと見てから腕を組んだ。
「この写真以上のものを撮って欲しいって?この写真を撮った人に頼まれたの?」
「いえ!そうではありません。その写真を撮ったのは多分、私の彼なので」
話の流れ上、月城さんの存在を明らかにした。
そして部屋で偶然見つけたということと、カメラは腕がなくて辞めたと聞いていたということも。