カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
雪乃さんは真顔になって私に忠告する。
「それはお客様には関係のないことだから。そんな顔、絶対にしちゃダメよ」
ピシャリと言われて背筋が伸びる。
「それと私は写真の講評はするけど、咲ちゃんの私生活の問題にまで関わるつもりはないわ。ましてこんなに素敵な写真。私だって見せられて悔しいって思う」
「すみません」
雪乃さんにここまで言わせてしまった。
申し訳なくて頭を深く下げた。
月城さんが綾音さんと付き合っていたからって、月城さんにカメラの腕前があるからって。
どちらにしたってそれは雪乃さんにも七五三の撮影にも関係ないことなのだ。
自己満足、自己防衛のためだけに他人を巻き込んだ私は最低だ。
「本当に申し訳ありません」
深く深く頭を下げて謝罪する。
「もう!ウジウジするな!しっかりしろ!」
突然、雪乃さんが私の背中をバシッと叩いた。
驚いて下げていた頭を上げると仁王立ちの雪乃さんが私を指差して言った。
「咲ちゃんはいいものを持ってる。きっとこの写真よりも素敵な写真を撮れる。彼氏のことも。過去に嫉妬している暇があるなら自分を磨きなさい。大丈夫。咲ちゃん、あなたはまだまだ伸びるわ」
雪乃さんの激励に目に涙が浮かんだ。
「泣かないの。泣いてる暇があるなら」
「働きます!」
涙を拭い、頭をもう一度深く下げてから機材の準備、スタジオのセッティング、小道具の準備を進める。