カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「月城さんは武地さんから大事な人まで奪うことが出来なかったんですね」
「え?」

月城さんは驚いたような顔をしているけど、雪乃さんが嫉妬するほどの写真を撮れる実力ある武地さんがカメラを持てなくなってしまったのは、これまでの話の流れからして月城さんに関係のあることだから。
罪悪感を抱き、責任を感じ、後悔をしていた月城さんが綾音さんへの恋心を諦めたのは、優しい月城さんならして当然のことのように思えた。

そしてその想いは現在まで引きずっていて、武地さんと同じようにカメラから離れようとした私を引き留めた。

「月城さんは悪くないのに」

私はそう呟き、もう一度写真を見比べる。
そうしていたらふと、ある言葉が脳裏に浮かんだ。

「月城さん!」
「ん?」
「この月城さんが撮影した写真、私のスマホに転送出来ませんか?」

性急に、かつ真剣な口調で願い出ると月城さんは理由も聞かず、すぐに画像を転送してくれた。
その画像を、スマートフォンにインストールしている写真編集機能を搭載したアプリを使ってレタッチしていく。

隣で月城さんが「へぇ」とか「なるほどね」と呟いているのに返事もせず黙々と作業を進めると、形になってきた。

「よし」

ひとまず納得いく形に出来上がった写真を月城さんのタブレットに送り、確認してもらう。

「いかがですか?」

聞いても返事が返ってこないのは月城さんが画像を見て驚き、固まっているから。
だから別の言葉を投げかけることにした。
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