カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
ウェディングフォト

「じゃあまずは花束を二人で持って顔を隠してください」

私が指示を出しているのは奏音さんと奏音さんの恋人、改め婚約者の宮部さん。
半年前、宮部さんにプロポーズされたと夜中に奏音さんから興奮気味の電話をもらい、その時にウェディングフォトをお願いされた。

『喜んで』

そう答えた私は今日という晴れの日に備えるべく、雪乃さんの元で猛勉強した。

『幸せな写真、撮ってくるんだよ』

雪乃さんからゴーサインをもらい、月城さんに付き合ってもらって何度も下見に足を運んだ公園で白のタキシードとウエディングドレスに身を包む新郎新婦にカメラを向ける。

「あら、綺麗ね」
「おめでとう」

道行く人たちから祝福の声が届く。

「ありがとうございます」

そのやり取りをひとしきり終えたところで撮影再開。

「花束で顔を隠して。あ、正確には口元だけでいいです」
「え?どういうこと?」

混乱している奏音さんの隣で宮部さんが冷静に言う。

「キスをしているように見せたいんですよ。ね?」
「理解が早くて助かります」

答えると隣からフッという笑いが漏れ聞こえた。
見ると服部くんが笑っている。

「なに?」
「いや、だって、今のやり取り、加藤と月城さんもしていたな、と思ってさ」

思い出し笑いをしていたようだ。

でもその通りで、今日は服部くんの撮影内容をいくつか参考にさせてもらっている。

•跪いて、ブーケを渡す、求婚シーン。
•とにかくギュッとくっつく。
•顔を見合わせて笑う。
•バックハグ。
•おでこくっつける。
•バックハグ、男女逆。
•新郎、新婦を少し見上げる感じで、新郎は新婦にキスする感じで見下ろす。
•頬にキスする。

これらのシーンを参考にさせてもらってもいいか事前に許可をもらいに行った時、服部くんが撮影に同行したいというので今日は来てもらった。

『アシスタントとして勉強させてもらう』
なんて服部くんは言っていたけど、私から盗むものなんてないだろうに。
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