カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「ていうかなんで月城さんまでいるの?」
服部くんはベンチに足を組んで座っている月城さんを横目で見てコソッと聞いてきた。
「荷物が多いからって車を出してくれたの。新婦とは従兄弟だし」
と答えたものの、服部くんは納得していない様子だ。
「俺のこと、まだ警戒してるとかじゃないよな?」
「それはさすがにないでしょ」
私は笑って答えた。
「でもめちゃくちゃ見られてるんだけど?!」
私の背後に隠れようとする服部くんを押し返して撮影の再開を促す。
「お手伝いとアドバイスよろしくね」
「お、おぅ」
まだ月城さんのことが気になっている服部くんはとりあえず置いておいて、仲睦まじく花束を持ち、見つめ合いながら話をしている二人にカメラを向け、撮影を進める。
「一旦、休憩しましょう」
あとは日没のタイミングで撮影をすれば良い。
天気予報通りならあと30分もすればちょうどいい夕焼けを背景に撮れるはず。
ドレスで身動きが取りにくい奏音さんを持参した大きめのアウトドアチェアまでエスコートし、飲み物を渡す。
「疲れたか?」
月城さんが奏音さんと宮部さんに聞いた。
「ううん。めちゃくちゃ楽しい。ね?」
奏音さんが宮部さんに同意を求めた。
「えぇ。すごく楽しいです。それに段取りよく進めてくれるので飽きることもありません」
宮部さんの言葉を聞いて、月城さんが私の方を見た。
「何度も下見に来たもんな」
「和津兄も一緒に?」
奏音さんに聞かれて月城さんに代わって頷く。
「私のパソコンの中の最近のデータ、月城さんばっかりです」
笑って言うと奏音さんが私と月城さんを見てニヤリと笑った。
「幸せそうだね。ね?」
奏音さんはまた宮部さんに同意を求める。
「えぇ。でも僕たちも多分、負けていないんじゃないですかね?」
宮部さんは立ち上がり、撮影した写真をチェックしている服部くんの背後に立ち、一緒に写真を見始めた。
「私も見たい!」
奏音さんが言うので服部くんは奏音さんのそばに行き、カメラを操作し画像を見せていく。
「わぁ!素敵!」
奏音さんの声がオクターブ上がった。
喜んでくれているようで嬉しい。
「やっぱり咲ちゃんに頼んでよかった」
「それは俺も思った」
服部くんが言う。
「加藤、腕上げたよな」
「本当に?!」
カメラを始めるキッカケをくれた服部くんに褒められると嬉しくてついテンションが上がってしまう。