カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました

「加藤…月城さんに睨まれるから」

服部くんが苦笑いを浮かべている。

「え?あ、ほんとだ」

月城さんを見た奏音さんが笑う。

「和津兄、そんなに独占欲丸出しだと嫌われるよ」
「え?そうなんですか?」

なぜか反応したのは宮部さん。

「もしかして宮部さんも独占欲強めなんですか?」

服部くんが聞くと宮部さんは奏音さんの方を見て、奏音さんが「プッ」と吹き出した。

「この前、ぬいぐるみにまで嫉妬してね。危うく婚約破棄の危機」
「その話はっ!」

慌てる宮部さんを見て、服部くんと目線を合わせ、笑ってしまう。

「まぁ、それだけ奏音さんも加藤も想われてるってことだよ」
「女冥利に尽きますね」

奏音さんに言えば、奏音さんは私から宮部さんを見て、ニコッと微笑んだ。

その柔らかな愛情に満ちた笑顔を撮り逃してしまったのは痛恨のミス。

でも撮れ高はかなり高い。

「やっぱり本物の恋人は纏う雰囲気が全然違うよね。どのアングルから撮っても幸せが溢れてる」

服部くんと共有した画像データを見ながら話す。

「恋人役と恋人は違うって?」

服部くんに聞かれて頷く。

「服部くんの写真は言葉を失うくらい綺麗だったけど奏音さんたちの感じとは違うよね」

同じシーン、同じ構図にしても全く別物のように見えるのだから写真は面白い。

「でも加藤と月城さんの写真は人気高いよ」
「どういうこと?」
「俺のプロフィールの画面に二人の写真を載せてあるんだけど、それで俺にウェディングフォト頼むお客さん多いし、社内でも「ウェディングフォトは服部に」なんて言われてる」

そこまで言うと服部くんは月城さんの方を見た。

「月城さんと加藤のことも、今じゃ公認の仲ですよね?」
「そうだな」

月城さんは頷いた。

「え?え?!どういうことですか?」

服部くんのプロフィールに写真を掲載されていることも、公認と化していることも知らず、問い詰めるように月城さんに詰め寄った。
でも空を見上げていた月城さんは話はあとだと言う。

「そろそろ陽が沈むぞ」

月城さんに言われて空を見上げると綺麗な夕焼けが広がっていた。
こうしてはいられない。
< 135 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop