カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「今日は珍しく甘えるね」
月城さんの笑いを含んだ声に、恥ずかしさもあって背中に顔を埋める。
「よし。じゃあ一緒に風呂に入るか」
「え?!」
なにがどうするとお風呂という発想になるのか。
混乱して月城さんを抱き締めていた腕を解くと月城さんはバスルームに行き、浴槽にお湯を張り始めた。
「撮影で疲れただろ?疲労回復効果の高い入浴剤をこの前秘書がくれたんだ」
それを聞いて月城さんが今だに忙しいことに気づいた。
「すみません。撮影とか付き合わせてしまって。今日もお休みなのに」
「俺が付いて行ったようなものだから気にするな」
でも休みの度に私に時間を割いてくれていた。
体の心配をするのは私の方だったではないか。
「すみません。なにも出来なくて」
「だから気にするなって。俺、咲が撮影している姿を見るのが好きなんだ。それに服部も来るなんて聞かされて大人しく家で待ってなんていられなかったし」
「私、そんなに信用ないですか?」
聞くと月城さんは困ったように眉根を寄せた。
「違う。俺に自信がないんだ。俺は咲を失うのが怖くてたまらなくて。服部はいい男だし」
月城さんも同じことを思ってくれていたんだ。
それを知れただけで不安が薄まり、体に力が湧いてくる。
「よし!じゃあ一緒にお風呂に入りましょう!お背中お流します!」
袖を捲って気合いを入れると、月城さんは驚いたような表情から一転して破顔した。
「咲には敵わないな」
「私だって月城さんには敵わないです。というより月城さんに愛されてるって実感が湧くとなんでも出来る気がするんです」
首を少しだけ傾げた月城さんに言葉を重ねる。
「月城さんのことが好きで、好き過ぎて私も失うのが怖いんです。だからさっき抱きしめてしまいました。『月城さんは誰にも渡さない!』って」
そこまで言うと今度は月城さんが私の体を抱きしめてくれた。