カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「私が撮る必要なさそうだけどなぁ」
昼休みに予定を確認すべくスマートフォンを見ながら呟くと隣でうどんを啜っている同期の吉井真紀がこちらを向いた。
「今度は誰に頼まれたの?」
「それは秘密」
言えば真紀は首を捻る。
「咲に頼んだ人、必ずお礼に来るから結局分かっちゃのに。今だって、ほら」
真紀の言葉尻が気になり、スマホから目を外して真紀の視線の先を追う。
すると前から受付の前田さんが手に菓子折りを持って私の元へやってきた。
「加藤さ〜ん!」
明るい声と菓子折りでその後の会話の内容がおおよそ予想つく。
でも知らない素振りで会釈する。
「おつかれさまです」
「お疲れさま。それより、この前ありがとう。おかげで彼氏ができたわ!加藤さんに撮ってもらえたからよ!これ、お礼!受け取って」
「こういうことは」
要らないと事前に言ってあるのに。
「そんな、遠慮なんてしないで。自撮りした写真じゃ全然だめだったのに、加藤さんに撮ってもらった写真に変えたらすぐいい人と巡り合えたんだから」
タイミングの問題じゃないかと思うけど不確かなことだから言わずにおく。