カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「それなら私、断ってもよかったってことですよね?」
「そうかもね。でもそのお友達、私に『月城はパートナー連れて来るって言ってたから奏音ちゃんもパートナーがいれば同伴で来てね』って声掛けてきたのよ」
「そんな嘘付かずに本物のパートナーに頼めばいいのに」
私では分不相応なので、本音が漏れてしまう。
「大丈夫。咲ちゃんは和津兄と並んでも引けを取らないわ。それに和津兄がパートナーとして咲ちゃんを紹介するつもりなのよ。自信持って!」
そんなこと言われても。
「仕事と無関係ならスーツじゃ行けないし。私、ドレス持っていないんですよねー…」
なにかと理由をつけて断ろうと考えていると、奏音さんはパーティードレスを貸すと言い出し、美容室も勝手に予約を入れられてしまった。
「お代は和津兄につけておくよう連絡したから。和津兄の隣に堂々と並んで楽しんできて」
逃げ道を塞がれてしまった。
「はぁ」
聞こえないくらいの小さなため息を吐き、断ることは諦めた。
さほど長い付き合いでなくても月城さんも奏音さんも一度言い出したら聞かなさそうなことはなんとなく分かっている。
こうなったら着飾ることが出来て、美味しいものがタダで食べられると開き直るしかないのだ。