カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「それは元々でしょ」
オーナーの後ろから声がしたので背後に目を配ると、お腹の大きな女性がいた。
「綾音」
オーナーが女性の体を支えるように手を伸ばした。
「大丈夫か?」
月城さんも声を掛けている。
「二人目だから大きくなるのが早いだけでまだ全然大丈夫。それより」
綾音さんが私の方を見たのでオーナーにしたのと同じように挨拶をする。
「和津くん〜。こんな綺麗な秘書さんを侍らせてなにがしたいのよ」
笑って言う綾音さんに月城さんは私の手を取り、指を絡ませてきた。
「ちょっと!月城さん!?」
恋人として、と言われていたものの、突然の恋人繋ぎに動揺を隠せない。
「なんだ、そういうこと?恋人連れて来るって言ったのに『秘書』とか言うから不思議だったんだ」
オーナーは私と月城さんを交互に見る。
「うん。お似合いだね。美男美女」
「でも社内で見せつけるのはほどほどにしないと。彼女の評判が悪くなったらかわいそうよ」
綾音さんの言葉に月城さんがニヤリと笑った。
「まだ知られていないから大丈夫だ」
「やだ!秘密の社内恋愛?ドキドキしちゃう」
綾音さんが自身の頬に両手を当てた。
可愛らしい仕草にまた写真を撮りたい気持ちがウズウズと湧いてくる。
「咲さん?」
視線に気づいた綾音さんが私の名を呼んだ。
「あ、すみません。可愛くてつい見入ってしまいました」
「せっかくだからふたりの写真撮ったら?」
月城さんに言われてここぞとばかりにカメラを取り出す。
「あ、でもその前に。これ、ちょっと持っていていただけますか?」
月城さんにカメラを手渡し、部屋の中から椅子を持ってくる。