カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「ほら」
夢中になって写真を撮っているところへ、月城さんが料理の乗ったお皿を目の前に差し出してくれた。
「少しは食べろ」
「ありがとうございます」
緊張も解れ、少しお腹も空いてきていた。
立食形式になっているので適当な場所を見つけて料理をいただく。
「美味しい!」
オーナーが言う通り、どの料理も抜群の味付けでどんどん箸が進む。
「もっと持ってきてやろうか?」
笑いを含んだ月城さんの声に口いっぱいに頬張って食べていたのが恥ずかしくなった。
「大丈夫です。それより月城さんは召し上がりましたか?」
「きみが写真を撮っている間に食べたよ」
それならよかったと食べ進めると、月城さんがカメラを指差した。
「写真、見てもいいか?」
「はい」
見られて困るものはない。
カメラを渡すと月城さんは慣れた手付きで画像を見ていく。
「月城さんも写真撮られるんですよね。奏音さんから聞きました」
「学生の頃に少し撮っていたが……あまりに下手ですぐにやめたよ」
間が気になったけど触れられたくないことなのかもしれないと食べ物と一緒に言葉を飲み込む。
「きみはカメラを構えている時、別人みたいに饒舌になるんだな」
「え?」
聞くと月城さんは画像を見ながら答える。
「普段、秘書として余計なことは話せないせいかな。俺が知っているきみとは全然違う。自信に満ち溢れている感じがして驚いたけど眩しかった」
それからカメラを構え、室内にいる人にカメラを向ける。
「『素敵な秘書さんですね』と何人に声をかけられたかわからないよ」
月城さんは言い終えると、ゆっくりこちらを見た。
視線が合い、ドキッとしてしまったので、動揺を隠すように食べ物を頬張る。
「恋人だと言ってくれて構わなかったのに」
「そ!それは!んん」
慌てて答えたからむせてしまう。
月城さんは私に飲み物を差し出してくれた。
「何から何まですみません」
「いや、それよりいいことを思いついた」
なんだろうと首を傾げると月城さんは手にしている私のカメラを掲げた。