カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「これで今度、俺のことを撮ってくれないか?そうしたらきみは色々と話してくれるし、もっときみに近付ける。俺はもっときみのことを知りたくなったんだ」
仕事に支障が出ているわけではないと言ってくれたのに。
「どうしてですか?」
恐る恐る聞くと、月城さんはカメラを下ろし、私をまっすぐに見つめて言った。
「きみに惹かれているから」
揶揄いや悪戯はないと言わんばかりの真剣な表情と眼差しに、鼓動が急加速していく。
「ご冗談を」
速る鼓動に気付かないふりをして乾いた笑いを含めていなす。
「月城さん、社内で人気じゃないですか。お気付きになっていませんか?」
「俺が気付かないとでも?」
言われて肩をすくめて見せた。
モテる男は違うらしい。
「だが俺は恋人を見つけるために叔父の会社に来たわけではない。叔父が俺に頭まで下げたんだ。俺は叔父の会社を建て直さないといけない」
どこか遠くを見据える、鋭く強い視線にドキッとする。
「経営状況は回復傾向にあると会計士の方から聞いています」
伝えると月城さんはこちらを見た。
「奏音の見合いが上手くいったし、きみが俺の仕事についてきてくれているからだ。きみの功績は大きい。ありがとう」