カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
慌てて言ったものの、月城さんはパソコンの画面に見入っている。
タイミング悪かったな、と申し訳なさに苛まれていると月城さんが声を上げた。

「この写真、すごくいいな」

見ると月城さんが後ろに回るよう視線を動かしたので背後に回り、画面を覗く。
オーナーと綾音さんが微笑み合っている写真が映し出されていた。

「それ自信作です」
「だろうな。レタッチもふたりの柔らかい空気感が出ていていい。でもこの量を作業するのは大変だっただろ?」

聞かれて首を横に振る。

「レタッチの作業は好きなので」
「俺は苦手なんだよな。今度教えてくれるか?」

振り向かれて視線が合い、ドキッとする。

「ひ、必要な時に。あ、あと」

赤面しそうだったので画面を見るよう指差すと月城さんはパソコンの画面に向き直った。

「最後の方に何枚か月城さんの写真もいれてあります」
「なんだ、盗み撮りか?」

揶揄うように月城さんが笑った。

「違います。ちゃんと「撮りますよ」ってお声がけしましたよ。酔っていらしたので覚えていないだけです」
「アルコールには強いんだがあの時は楽しかったからな。飲み過ぎたか」

そう呟きながら月城さんは自身の写真を見てフッと笑った。

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