カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「今度はどんな風に揶揄うおつもりですか?」 

聞くと月城さんは柔らかく微笑んだ。

「揶揄わないよ。ただ食事が無理というならもう少し一緒にいたい。いいか?」

聞かれてドキッとする。
そしてどう答えるのが正解かわからず、肯定も否定もしないで固まっていると月城さんがそっと私の頬に触れた。

暖かくて大きな手に包まれ、すごくドキドキするのに不思議と安心感があって、私も疲れていたのだろう。
思わず目を閉じてしまう。

「それはキスをしてもいいということか?」

聞かれてパチっと目を開ける。

「ち、違います!」
「なんだ、残念」

月城さんの柔らかな微笑みに胸がキュウっと締め付けられる。

(なにこれ)

「いつか」

月城さんの声に視線を上げると、月城さんは私の頬を優しく撫でてから、目線を唇に落とした。

「キスをしてもいいという日が来たら教えてくれ」
「そんな日」

来るなんて保証はない。
でも綺麗な瞳に真っ直ぐ見つめられて、誰もが憧れる男性に好意的な言葉を掛けられて、意識せずになんていられない。

それからというもの、月城さんとは視線がよく合うようになり、その度、ドキッとしてしまうのだ。
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