カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
「好きだ」と告白されたわけではないのに。
「会議に行ってくる」
「行ってらっしゃい」
その会話だけで新婚生活という単語を思い浮かべてしまう私は完全におかしくなっている。
コンコン
「はっ!はいっ!!」
ノック音だけでビクッとしてしまうのは月城さんのことを異常なくらい意識してしまっているせい。
「あれ?でも」
月城さんならノックはしないか、と扉の方を見ると、服部くんが顔を覗かせた。
そういえば今日は広報部の取材の日。
腕時計を見ると午後1時になろうとしている。
「ごめん、午前中の会議が延びちゃって…もうそろそろ月城さん戻って来ると思うんだけど」
とりあえず座ってもらおうとソファーに腰掛けてもらえるよう促し、コーヒーを淹れる。
「加藤、髪切った?」
揃える程度だったのに気づいてくれたことに驚く。
「似合ってるよ」
「本当?ありがとう」
コーヒーを差し出すも、服部くんは手をつけず、カメラをこちらに構えた。
「ポニーテールもよかったけど、おろしている方が柔らかい印象になるな」
カメラ越しだとしても見られて褒められると照れてしまう。
「なぁ、今度撮らせてくれない?俺、フォトグラファーの登録しようかな、と思ってるんだ」
聞けば登録するのには合格基準があって、提出した写真がその基準をクリアしていないといけないと言う。
「そのモデルを加藤にお願いしたいんだよ」