カメラを趣味にしていたら次期社長に溺愛されました
核心をつかれて、何も言えずに固まってしまう。
服部くんはそれが答えだと察したようでひとつ大きく頷いた。

「やっぱりな。でも引け目を感じることなんてないよ」
「そんなこと」

ないと首を横に振ると服部くんは私をファインダー越しに見ながら答えてくれた。

「俺は加藤のこと、出会った当時から綺麗な子だな、って思っていたよ。背が高いわけじゃないし、髪も黒くて一つに結んでることが多いから目立ちにくいけど、色白で肌は透き通るように綺麗で、茶色がかった瞳が特徴的で。ぽってりとした厚めの唇は色っぽいし」
「ちょ、ちょっとそこまで!」

褒められることに慣れていないのであまりに恥ずかしくて止めずにいられなかった。

「あ!!そうやって真っ赤になるのも可愛いよな」

服部くんがカメラを構え直したので顔を手で覆う。

「ハハ。ね、可愛いですよね?」

服部くんは月城さんに同意を求めた。
月城さんがこちらを見ているのが気配で分かり、顔を覆う手を外せない。

「服部くん!もうそれ以上余計なこと言わないで!」
「わかったよ。でもこれだけは言わせて。加藤の美とそれに自身が気付いていないアンバランスさを俺は気に入っているんだ。本当は加藤一人の写真でもいいんだけどその会社、ブライダルの依頼が多いから」

ニーズに合わせたテスト内容を加味した上で、服部くんなりに考えて出した結論が私と月城さんの恋人ショットなのだろう。
フォトグラファーになりたいという気持ちも分からなくはないし、協力出来たらどんなにいいかとは思う。
ただ恋愛経験に乏しい私は恋人を演じることは難しく、また、月城さんの相手が務まるとも思えない。

「少し考えさせて」

服部くんの時間を無駄にするようなことはしたくないし、結果が伴わなかった場合の後悔もさせたくない。

「とりあえず社内報の取材を始めよう?時間あまりないよ」

無理矢理話をすり替えた。

「そうだ。すみません。えっと、じゃあまずは……」

服部くんは慌ただしくタブレットを取り出して取材を始めた。
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